パンサー尾形、将来的にサッカーの指導者ライセンス取得へ。

パンサー尾形貴弘の夢「指導者ライセンスを取ってサッカーで宮城を盛り上げたい」…震災から１１年

　東日本大震災から１１年。多くの困難に直面しながら、東北の人たちはどんな希望を胸に進んできたか。スポーツ報知では９日から３回に分け、それぞれの立場で生き抜いてきた人たちの未来への思いを紹介する。第２回は宮城・東松島市出身で人気お笑いトリオ「パンサー」の尾形貴弘（４４）が語る。仙台育英高時代はサッカー部の主将を務め、昨冬の全国高校選手権も観戦。将来的にはサッカー指導者の資格を取って地元を盛り上げたいと表明し、これまで震災に関して「話すのを避けてきた」理由も明かした。（取材・構成＝小山内　彩希）

　尾形は、お笑い芸人という立場とその使命感から、震災のことについて「できれば話すのを避けたかった」と明かした。

　「（震災を）忘れたいということじゃない。地元は津波にのまれ、実家も全壊。思い出も何もかも津波で流されちゃった寂しさを忘れられるわけない。でも自分は芸人だから、全然笑えないことを語るのはどうなのかと思ってきた。やっぱり、自分はポジティブにやるしかないんです。僕ら芸人がネガティブになったって、何も生まれないですから」

　今年度の全国高校選手権で３回戦に進んだサッカーの強豪・仙台育英では主将として背番号１０をつけた。幼少期からのトロフィーや写真も津波で全て流されたが「どんなときもポジティブに」という気持ちを忘れなかった。

　「自分は東京でお笑いをやっていたので、地元の両親や友達のしんどさに比べたら全然きつくない。だからこそ、この仕事を手を抜かずにやることでしか、地元を元気づける方法はないと思っていました」

　「東松島ふるさと復興大使」を務めるなど多くの復興企画に参加し、１８年からは同じ宮城県出身の狩野英孝（４０）と、県民の悩みを解決するバラエティー番組「かのおが便利軒」にもレギュラー出演。地域住民と交流を重ねる中で、地元への思いも強まっていった。

　「仕事で帰ってくるたびに地元の人の温かさを感じ、逆に僕が元気をもらっていた。実家は（１４年から）塩釜市に移っているけど、いつか生まれ育った東松島も自分の娘に見てほしい。連れて行きたいです」

　芸能界での今後は「生き残ることが目標」と語る。「娘も４歳だし、家のローンもあるので（笑い）」。お笑いはもちろん、中大サッカー部の３学年後輩で元Ｊ１川崎の中村憲剛氏（４１）と親交を深めたサッカーもサバイバル術にしていく意気込みだ。

　「数年前から考えていたんですけど、地元の小中学生くらいの子を対象にしたサッカー教室を開きたい。今年こそは（日本サッカー協会の）Ｃ級かＢ級のライセンスを取ろうと思っています。友達のサッカー選手を呼ぶのもいいかも。好きなサッカーで宮城を盛り上げていくことができたら最高ですね」

　取材の最後には地元のファンに向け、こん身の「サンキュー！」を決めた。今年も笑いと元気で宮城を明るく照らしていく。

　◆尾形　貴弘（おがた・たかひろ）１９７７年４月２７日、宮城・東松島市生まれ。４４歳。仙台育英高サッカー部では３年時に東北大会優勝、同年の全国ユース大会１６強。中大でもサッカー部に所属。２００２年にＮＳＣ東京校に８期生として入学。０８年に菅良太郎、向井慧と「パンサー」を結成。１８１センチ、７４キロ。家族は妻、娘。血液型Ｂ。